1986年に富山県立近代美術館で起こった、大浦信行の版画コラージュ作品「遠近を抱えて」の展示をめぐる一連の事件は、美術館だけではなく図書館なども巻き込み、日本の戦後美術史の中でも、とりわけ重要な事件となりました。r r 70年代辺りから進んでいく社会全体の右翼化、体制順応傾向をも象徴するように見えるこの事件は、「表現の自由」という概念が日本社会の中に根幹的な価値として根付いていないことを露わにしたという意味で、忘れ難い歴史的意義を持っています。r r その事件の顛末を、裁判記録や文献の収集など、できる限り詳細に「全記録」としてまとめた本書は、この事件のことについて知るには、唯一無二の重要性を持った書物です。ですが、もうすでに入手は極めて難しく、古本市場にもほとんど出回らないのが実情です。r r コンディションは、極めていいと思います。小口や天地に経年による薄い汚れがあり、表紙にも多少ヨレはありますが、全体としては目立つものではなく、中身はまっさらで傷も汚れも書き込みもありません。写真をご参照ください。このような状態で本書が出ることは、ほぼあり得ないことなので、かなりの希少本ということになります。ご関心のある方はぜひ。